フランスの日本レストランの
歴史と現状


フランス全土にはもはや数え切れないほどの日本レストランが存在します。
一説によれば 1500店という話ですが、恐らくその数字はもう古く、2000や2500に達しているでしょう。
今、現在においても、日本レストランは頻繁に新しい店ができ、大げさに言えば石を投げれば日本レストランかケバブ屋に当たるというレベルです。
しかし、残念なことに、9割以上の日本レストランは中国人を始めとする他国人によって経営され、その料理のレベルの低さは驚くべきものがあります。
ほとんどの日本人経営の日本レストランはパリに集中しています。
しかしそのパリでさえ、日本人経営のレストランはたったの80軒程度しかありません。(パリ20区内の日本レストランの数は800軒)
パリでさえその程度しか本物の日本レストランがないのですから、地方にはほとんど本物の日本レストランはないと言えます。
例えば、ここストラスブールには約30件の日本レストランがあるわけですが、日本人経営の本物の日本レストランは2013年7月現在、一軒もありません。
中国人によって提供される間違った日本食に関して、
私は恥ずかしいです。(ありえない料理をフランス人は一般の日本食の味だと信じている。)
哀しいです。(なぜこんな現状になっているのか。)
悔しいです。(こんな現状になる前に日本人の手でなんとかできなかったのか?)

なぜ、こんな状況になっているのか?それを説明したいと思います。




なぜ外国人(主に中国人)が日本レストランをやっているのか?


上述の通り、フランス全土でも90%以上の日本レストランは外国人によって経営されています。さらに本物の日本レストランはほとんどパリにあって、その他の都市では本物の日本レストランはほぼゼロと言っても過言ではない状況です。

オーナーのほとんどは中国人、それに次いでベトナム人、タイ人、韓国人です。

では、ここで皆さんも疑問に思われていると思うんですが、

「なんで日本人がやってないの?」ということですね。

これには日本食とレストランの歴史が関係しています。


1970年代。世界中で健康志向が高まりをみせます。動物性コレステロールを減らして体にできるだけ良いものを食べたいなと思う人が世界中で増えました。

ちょうどその頃、日本食と日本人の長寿に関する論文がいくつか発表されます。日本食と健康に関する関係が、研究によって次第に明らかになってきます。

「日本食は健康に良い」というイメージはその頃生まれ、それに伴って日本食ブームが到来しました。


日本食さえやれば儲かる時代・・・

1980年代以降、家電製品や、車、漫画・アニメなどによる日本文化と日本食への興味が増しました。そして健康志向が日本レストランの数を爆発的に増加させました。

これに目をつけたのが中国人です。

中華レストランはすでにたくさんの数がフランスに存在していてすでに飽和状態。
中国人はレストラン業界で大変厳しい競争を強いられ、中国レストランの数も若干の減少傾向を見せていました。
価格競争も厳しく、高い値段では売れず、なかなか儲けるのが難しいレストランが多く存在しました。

そこで彼らが目をつけたのが日本食でした。

経営に行き詰った多くの中国人経営者が中国レストランを(たいした日本食の知識なしに)日本レストランに鞍替えしました。


当時の日本食というのは彼らにとって大変魅力的な市場でした。

需要があるのに店(供給)が少ない。
日本料理はまだまだ数が少なくて、フランス人にとって大変めずらしいもので、「高くてもしょうがない、健康にいいんだから高くても当たり前」だというイメージがありました。

それを利用して、中国人たちは単価を高く設定し、大儲けすることができました。

「日本レストランさえやれば、質が悪くても儲かる。誰がやっても儲かる!」

という時代が本当にありました。

しかし、そんなに知識も経験もない状態で始められた日本レストランですから、当然、間違いだらけの日本食だったわけです。そこから、今の日本レストランの現状は始まります。
間違った日本食だろうが、そんな場所でも5年や10働けば、そこの従業員(主に中国人)は自信を持つわけです。

「私はもう日本食のスペシャリストだ。日本食なんて簡単だ。私にもやれる。絶対儲かる。」

そしてその人も日本食レストランを開きます。

しかし偽者のレストランで日本食に自信を持ったところで、次に開く店も当然偽者になります。

日本に滞在したこともなければ、日本食を勉強したこともない人たちによる日本食レストランの大増殖が起こりました。


こうして、日本レストランの数だけが飛躍的に増殖して、1980年当時に比べ、レストランの数はパリだけでも30倍に膨れ上がりました。


フランス在住の日本料理の料理人の間にはこんな慣用句があります。


「フランスの日本レストランでの10年の経験は、日本での和食経験の1年に劣る。」


元々低いレベルの中で10年学んでも、何も学べないんです。


間違った日本食たち・・・

ここでは例をお見せしながらご説明したいと思います。
これから示す例は、残念ながら「例外」ではないんです。
むしろ80%以上の日本レストランがこれから示すとおりで、そっちの方がむしろフランスで「普通」の状態と化してしまっています。
まず、味噌汁に出汁は使いません。基本的には味噌汁は「お湯」と「味噌」だけによって構成されています。
私はフランスの様々な日本レストランで日本食を食べてきました。
前から、出汁が薄いなぁと思って来たんですが、まさか出汁を使わないのが普通だとは想像しませんでした。
彼ら、一応プロですよね?びっくりしました。
出汁の変わりにコンソメを入れることもあります。でも、コンソメってちょっと違いますよね。
しかし、例えコンソメでも、出汁が全くないよりはましです。
根本的に味噌が少なすぎます。味噌汁なのか、お湯なのか。
本物を食べたことがないのですから当然です。
何が正しいのかを経験的に理解していないんです。
これは例外的な一店舗について話しているわけではありません。ほとんど全てがそうです。
そしてどの店舗もなぜかうすーいマッシュルームが入っています。
そうやら「味噌汁にはマッシュルームが入っているもの。」という間違った常識が中国人の間にあるようです。

ある日本レストランのメニューの一例をご紹介します。

フランス人には普通に見えるこのメニューも、日本人にはちょっと違った 印象を与えます。  




たぎり? さぼ?




木タテ・・・ホタテと書きたいのでしょう。しかし右のアルファベットは大エビになっている。




ガイ丼(正しくはGyu-don)



イカよ。どこへいく?



フランス語はうなぎなのにあなごと書かれている。



ツヤーベット。



FRUIT DE MER はシーフードという意味。
焼き鳥なのにシーフード。それは「鳥」じゃない。



大元ぴ (正しく書けないなら初めから日本語載せるな。恥ずかしい。)



(フランス語訳はイカの串焼きと書いてある。ひなどり?)



カツ丼

間違い ×

 

本物      

   
烈火のごとく中華の強火で煮続けること10分以上。卵が恐ろしくかっちかちになった見るも異様なカツ丼ができあがる。ソースは甘い焼き鳥ソースを使う。完全にカツ丼ではない。かつはパン粉だけで作られ卵や小麦粉は使用しない。大きさはわずか5mmに切る。 カツ丼はしょうゆベースのソースで、昆布やかつおぶしなどを出汁として作られる。玉子は半熟や完熟一歩手前が理想で、強火にかけてはいけない。カツは小麦粉、玉子、パン粉によってできている。


寿司

間違い ×

 

本物      

   
まず酢飯のレシピが変なことが多い。甘すぎる、しょっぱ過ぎることが多いが、酢飯になんの味の面白みもない。昆布・酒などを使用しないからこうなる。
料理人は寿司に関する知識が欠如している。
酢飯を押しすぎ。固い。魚の質はものすごく低い。
(これは地域に因るかも)
一般に炊き3年握り8年と言われる経験が物を言う世界。一流の寿司店では、ネタごとに酢飯のレシピを変えて出すと言われる。米は固過ぎず柔らか過ぎず、ネタは新鮮で産地にもこだわりを持つ。


その他の例

天ぷら: 天ぷらにうなぎのタレを螺旋状にかけて出す。日本では使われない相当変わった野菜を用いたり、ナスの皮の部分だけを使用したり、根本から何かが違う。


ラーメン: ラーメンの麺をラーメンスープで湯がく。当たり前だがスープは粉の味が浸透しひどい。鳥のスープにコンソメを入れただけなど。明らかにラーメンではない。具に刺身用の鮭などがのる。


うどん: スープはかつおぶしと昆布によって作られていない。うどんなのになぜかパセリと、寿司ネタ用のエビが入っている。


その他、ネンやチャーメンなど、日本レストランなのに中華料理がちらほら。チンタオビールに中国の酒。文化を混同させるのはやめてほしい。




日本レストランも新しい時代へ


中国人のことを散々こき下ろしてきましたが、何事にも功罪があります。
間違った味と文化を広めたという点では罪ですが、日本食というフランス人にとって未知のものを親しみやすいレベルまで、ここまで広めたという部分は功の部分です。
彼らだって散々日本食を利用して儲けてきたわけだから、間違った部分を私に指摘されても文句を言える筋合いではないと思います。

日本レストランの数は今もってして恐ろしいスピードで増え続けています。
しかし、そろそろ飽和が近いと私は見ています。
寿司と焼き鳥しかない、典型的な中国店がありふれすぎています。
1990年代から続いた、中国形式の判を押したような特徴のない店の時代は終わりが間もないです。
これからは
①びっくりするほど安い(日本の100円寿司のように)
②今までにない日本料理(しゃぶしゃぶ、すき焼き、お好み焼きなど)
③カジュアルでモダンでカフェやファミレスのように入りやすい雰囲気(古い形態の日本レストランは堅苦しくて入りづらい雰囲気があります)
などが重要になってくると思います。
やはり、中国人による経営の最大のマイナスポイントは、根本的な日本食の知識が欠如していることにあります。
一方で国際化は進み、日本に行ったことのあるフランス人も増えましたし、逆にフランス国内の日本人の数も増えて、
フランス人も何が本物なのかを少しずつ理解しつつあります。そして、本物の日本食に対する需要が高まっています。
これからは日本人経営の日本レストランは絶対増えるはずですし、それが評価されていく時代になると思います。

パリにはそこそこ手ごろな値段での本物の日本レストランが存在するので、それを今後は地方にもぜひ期待したいところです。というか、パリで食べたことのあるフランス人は、このストラスブールを始めとする地方都市の日本レストランの現状をおかしいと思い始めています。 

より安く、
より豊富な種類を、
よりカジュアルに。

そんな時代がきっと来る。




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